踊る人 おどるさかな げんきにふらふらしています
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家を売る。
それが、どれだけのことを意味するのか、私には想像の域を出ない。
最近知り合った初老のカフェのオーナーは、寝る間も惜しんでお店作りに没頭しているようで、目に曇りがない。
年齢からして、物があることが豊かさであった世代に違いない。
先日、その方がカフェのために自宅を売却したという話を耳にした。本当だとしたら、かなりの覚悟を伴うことではないだろうか。
そして昨日、慣れ親しんだ家を売りに出すという91歳の女性に会った。
嫁ぎ、3人の息子を育て、大阪空襲にも耐えた長屋を売るのだという。数年前に夫に先立たれ、去年からケアハウスでの集団生活を始めている。救急車で搬送された病院から自宅に戻ることなく入居したため、殆んど全ての家財道具は家に残ったまま。
今回、急に家を売りに出す事になり、身の回りの品を引き取りに行くのだという。
一緒に、その家を訪ねた。
着くやいなや、「売物件」の看板が目に飛び込む。
鉢植えの土は捨てられ、唯一残ったアロエも茶色く枯れている。
しかし、表札はかかったままだ。
一年間、家主を失っていた家はねずみが畳をかじり、そこらにフンが。
いかにも長屋らしい、傾斜の急な階段にはしっかりとススがついている。
「こんな急やったんやなぁ。」
久しぶりに階段を見て、そうつぶやいた女性。
彼女は、一年前にこの階段から足を踏み外して意識を失い、2時間半後に気がついた。奇跡的に無傷だった。しかし、このことがきっかけで、70年近く慣れ親しんだ家を離れ、ケアハウスに移り住む事になった。
一年ぶりの我が家だという彼女は、タンスや戸棚を開けては懐かしがり、
「せやかて、持っていかれへんからなぁ」
と仕切りに自分言い聞かせるかのように呟く。
とてもお洒落な方であったのだろう。タンスには数多くの着物と洋服が所狭しと並んでいた。衣類だけに留まらず、この家にはとにかく物が多い。捨てられないのだろう。物を過保護に大切にするあまり、収納という収納全てにはちきれんばかりの物が詰め込まれている。いや、はちきれている。以前、冷蔵庫から私が生まれる前に賞味期限が切れた真空パックを見つけ、思わず固まってしまったのを覚えている。
幼いころは祖母が不思議でしょうがなかった。まだあるにも関わらず、次から次へと日曜品を買ってくる。菓子からタオルから、常に何かをくれようとした。この家でお菓子をもらったら、まず始めに賞味期限を確認しなければならなかった。
「また取りに来るからええわ」と多くの物を残し家を後にした彼女は、御近所さんに挨拶に行く。
彼女は、今、必死に自身の物への執着と闘っているように見えた。70年間一生懸命に溜め込んできた財産が、間もなく自分の手から離れようとしている。この感覚が私に分かる日はこの先来るのだろうか。
私の祖母にとって、家は自分で建てた家でもなく、自分が買ったわけでもなく、嫁いできた時からそこにあったものだろう。しかし、70年間同じ場所に住み続ける事ができたのはそこに家があったからである。
この春、私は人生で7度目の引越しをした。このところ、引越しと共に、物を減らし続けている。今回は、ダンボール4箱と布団を持って新居に移った。今家がある場所に住み続けるという感覚が全く湧かない。しかも、入居早々に二週間家を離れる生活に入っている。これは、二年契約と考えると50分の1の期間、そこにいないということである。今日からあの部屋は私のいない部屋になっている。
これから札幌で、the room と言う作品のクリエーションに入る。(以前はここにいたが)今この部屋にはいない、という感覚が今回の作品の鍵となるようだ。私は、東京で置き去りにされている、私がいなくなった部屋に思いを馳せながら、今日、the room に入ろうとしている。
contemporary dance performance
『the room』
2013.5.17(金)19:00
5.18(土)15:00
会場:あけぼのアート&コミュニティセンター・中ホール
チケット:1500円(学生 800円)
出演者
柴田詠子
香取直登
八重尾恵
濱田陽平
本日よりクリエーション始まります。
踊る人・濱田陽平

それが、どれだけのことを意味するのか、私には想像の域を出ない。
最近知り合った初老のカフェのオーナーは、寝る間も惜しんでお店作りに没頭しているようで、目に曇りがない。
年齢からして、物があることが豊かさであった世代に違いない。
先日、その方がカフェのために自宅を売却したという話を耳にした。本当だとしたら、かなりの覚悟を伴うことではないだろうか。
そして昨日、慣れ親しんだ家を売りに出すという91歳の女性に会った。
嫁ぎ、3人の息子を育て、大阪空襲にも耐えた長屋を売るのだという。数年前に夫に先立たれ、去年からケアハウスでの集団生活を始めている。救急車で搬送された病院から自宅に戻ることなく入居したため、殆んど全ての家財道具は家に残ったまま。
今回、急に家を売りに出す事になり、身の回りの品を引き取りに行くのだという。
一緒に、その家を訪ねた。
着くやいなや、「売物件」の看板が目に飛び込む。
鉢植えの土は捨てられ、唯一残ったアロエも茶色く枯れている。
しかし、表札はかかったままだ。
一年間、家主を失っていた家はねずみが畳をかじり、そこらにフンが。
いかにも長屋らしい、傾斜の急な階段にはしっかりとススがついている。
「こんな急やったんやなぁ。」
久しぶりに階段を見て、そうつぶやいた女性。
彼女は、一年前にこの階段から足を踏み外して意識を失い、2時間半後に気がついた。奇跡的に無傷だった。しかし、このことがきっかけで、70年近く慣れ親しんだ家を離れ、ケアハウスに移り住む事になった。
一年ぶりの我が家だという彼女は、タンスや戸棚を開けては懐かしがり、
「せやかて、持っていかれへんからなぁ」
と仕切りに自分言い聞かせるかのように呟く。
とてもお洒落な方であったのだろう。タンスには数多くの着物と洋服が所狭しと並んでいた。衣類だけに留まらず、この家にはとにかく物が多い。捨てられないのだろう。物を過保護に大切にするあまり、収納という収納全てにはちきれんばかりの物が詰め込まれている。いや、はちきれている。以前、冷蔵庫から私が生まれる前に賞味期限が切れた真空パックを見つけ、思わず固まってしまったのを覚えている。
幼いころは祖母が不思議でしょうがなかった。まだあるにも関わらず、次から次へと日曜品を買ってくる。菓子からタオルから、常に何かをくれようとした。この家でお菓子をもらったら、まず始めに賞味期限を確認しなければならなかった。
「また取りに来るからええわ」と多くの物を残し家を後にした彼女は、御近所さんに挨拶に行く。
彼女は、今、必死に自身の物への執着と闘っているように見えた。70年間一生懸命に溜め込んできた財産が、間もなく自分の手から離れようとしている。この感覚が私に分かる日はこの先来るのだろうか。
私の祖母にとって、家は自分で建てた家でもなく、自分が買ったわけでもなく、嫁いできた時からそこにあったものだろう。しかし、70年間同じ場所に住み続ける事ができたのはそこに家があったからである。
この春、私は人生で7度目の引越しをした。このところ、引越しと共に、物を減らし続けている。今回は、ダンボール4箱と布団を持って新居に移った。今家がある場所に住み続けるという感覚が全く湧かない。しかも、入居早々に二週間家を離れる生活に入っている。これは、二年契約と考えると50分の1の期間、そこにいないということである。今日からあの部屋は私のいない部屋になっている。
これから札幌で、the room と言う作品のクリエーションに入る。(以前はここにいたが)今この部屋にはいない、という感覚が今回の作品の鍵となるようだ。私は、東京で置き去りにされている、私がいなくなった部屋に思いを馳せながら、今日、the room に入ろうとしている。
contemporary dance performance
『the room』
2013.5.17(金)19:00
5.18(土)15:00
会場:あけぼのアート&コミュニティセンター・中ホール
チケット:1500円(学生 800円)
出演者
柴田詠子
香取直登
八重尾恵
濱田陽平
本日よりクリエーション始まります。
踊る人・濱田陽平
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プロフィール
HN:
はまー
年齢:
37
性別:
男性
誕生日:
1987/05/24
職業:
踊る人
趣味:
走る跳ぶ歌う
自己紹介:
おどるさかな代表
踊る人。大阪生まれ愛媛育ち。ミュージカル俳優を志すも、近藤良平作品「山羊ボー走」出演を機にダンスの道へ。同作品のNY 版にも参加。「元気にふらふら」をモットーに、 踊る場を求めて劇場内外を放浪している。2012.5.30に、初の単独自主ソロ公演「えらびしぶる」をSTスポット横浜にて行う。ここ一年では、近藤良平作品「山羊の一生」、 平原慎太郎作品「街」の他、fundada.、AAPA、Monochrome Circus、Baobab等のカンパニーの作品に出演。(2012.06.23更新)
踊る人。大阪生まれ愛媛育ち。ミュージカル俳優を志すも、近藤良平作品「山羊ボー走」出演を機にダンスの道へ。同作品のNY 版にも参加。「元気にふらふら」をモットーに、 踊る場を求めて劇場内外を放浪している。2012.5.30に、初の単独自主ソロ公演「えらびしぶる」をSTスポット横浜にて行う。ここ一年では、近藤良平作品「山羊の一生」、 平原慎太郎作品「街」の他、fundada.、AAPA、Monochrome Circus、Baobab等のカンパニーの作品に出演。(2012.06.23更新)
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